公園を歩くこと
小学生の頃は、狭い敷地に飼い慣らされていたくせにして、まるで毎日が冒険のようだった。
そこらに落ちた木の枝を剣に見立てて、自分は勇者であることを疑わなかった。
たかだか半径数百メートルの世界は毎日が輝いていた。
現在。
行動範囲は数百倍に膨れ上がったはずなのに、毎日が飼い慣らされている気分だ。
冒険とはリスクを伴うもの。
剣とは他人を傷つけるもの。
勇者とは、空気の読めない変わり者。
そんな思想に支配されてしまった。
共に冒険した仲間たちはバラバラの人生を送っているらしい。ヒロイン役のあの子はもう母親だ。
公園を歩くことのように簡単だと思われていたことは、思っていたより難しい。
ここからは、不器用な男の冒険譚となるのだ。